私の優しくない先輩
日日日(あきら)氏の「私の優しくない先輩」読了
天才高校生作家と名高い日日日氏は、短期間の間に4つの賞を獲得するなど、将来が楽しみな作家として認知されるようになっています。「ちーちゃんは悠久の向こう」が、それなりの出来だったので当分の間作者買い対象にしたいと思っていたり。
「私の優しくない先輩」は、碧天舎の、恋愛小説コンテスト ラブストーリー大賞受賞作だそうだ。作家たる者、色恋沙汰を書けないと艶に欠くからね、好印象。
さて、現時点で文庫本は発売されておらず、単行本での購入になりました。そのくせに短編といっていいほどの薄さです。面白さと文字の多さは比例しないんだけど、なんか損した感じがするのは何故だろう。赤川次郎と京極夏彦の比較と言えばお分かりいただけると思う。
ということで1時間足らずで読むことができました。電車のお供に最適でしょう。
内容は明快な恋愛物語。
変に技巧的に走っていないので読みやすく、この上なくわかりやすいです。2作品を読んだだけですが、日日日氏はシンプルであると感じました。シンプルが故にテンポが良く、中だるみが全くありません。最後まで一気に読むことができるでしょう。構成は「ちーちゃん・・・」とは違って奇をてらったものではありませんでした。寧ろ定型的、古典的、水戸黄門の印籠的なものでした。シンプルさが際だつわけです。
ただ、このシンプルさが意識的に生み出されたものならば問題ないのですが・・・
単に力不足でディテールが書けないだけに思えてなりません。司馬遼太郎氏の様にトラック一杯の資料を参考しろとは言わないまでも、説得力やリアリティを持たせる程度の努力はして欲しい。詐欺師の語りと同じです。嘘・フィクションを語るにも、少なからずの「真実」が必要なのです。
作中、主人公の抱える大きな問題が明らかになります。この問題のディテールを掘り下げず、さらりと流しています。物語の進行上、賢い描き方なのかもしれません。主題とは関係ないので省略したのかもしれません。しかし私にとって、非常に作者に都合の良い設定だと、思わざるを得なかったのです。
物語としては纏まって、それなりに涙ぐむ場面もあって、面白いと感じることはできました。しかし日日日氏の2作品に共通して感じた事は、小利口すぎるということです。もっと肉太な文章が見てみたい、もっと自分をさらけ出した文章を書いて欲しい。
シンプルで青い恋愛小説としては、エリック=シーガルの「ラブ・ストーリー」をお奨めする。日日日氏には、このレベルにまで達してもらいたいと期待しています。
辛辣に評価してしまったけれど、そこいらの本よりかはなんぼかマシです。才能にはより高いハードルの期待で答えてしまう。悪い癖ですね。



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