« ユニクロ「UNIQLOCK」 世界三大広告賞で2冠 | トップページ | OADネギま が 終っている件 »

2008/06/04

一迅社文庫 西川真音 「零と羊飼い」 感想

西川真音氏の「零と羊飼い」読了です。

一迅社文庫の立ち上げを飾る一角を担った本書ですが、
私にとっては満足のいく内容でした。

零と羊飼い (一迅社文庫 に 1-1)

□■ 本書発刊の経緯によせて ■□

本書あとがきに著者西川氏が触れていますが、
本書の前身となったのは、工画堂のデジタルノベル「羊の方舟」。
そしてその前身が同名の連載形式のWEBノベルになります。

2度の再構成を経て本書に至ったわけですが、
メディア媒体が変わるたびに、肉付けが異なるわけで苦労されたようです。

小説というメディア媒体は、ページ数の制限がありますので、
ノベルゲームのようにだらだらと冗長な文を書きなぐる事はできません。
推敲を重ね、選び抜かれた文章の躍る様が小説の醍醐味。
本書も、前身のノベルゲームよりもシェイプアップされたのでしょう・・・

(・・・「羊の方舟」をプレイしたことの無いので説得力はありませんが)


□■ 世界の終り と 「贖罪」 ■□

これまでに多くの語り部が世界の終りを題材としてきました。
全て等しく与えられる死の前に、否応なく暴かれる人間の本性。
世界の終りに抗う生への渇望。
そんな暴力的なまでの感情の渦が観客を惹き付けるわけです。

DEEP IMPACT」「終末の過ごし方」「そして明日の世界より
ハイペリオン」「アルマゲドン」「ゼーガペイン」「宇宙のステルヴィア
リバーズエンド」「イリヤの空、UFOの夏

・・・本書は、そんな数多の作品の中の一つであり
世界の終りに面した人間達を描く物語なのですが、
少々毛色は違うかもしれません。
世界を確実に救う方法が確立されているのです。

では、何故物語として成り立つか?

本書は「贖罪」の物語。
───世界を救うための「殉教者」を選ぶ物語。

全世界から集められた特殊能力者の4人。
その内2人が死ぬだけで、世界全ての人が救われる。
数ある世界の終りとしては、懸ける「代償」は少ない?
───その本人達を除けばね

既に物語当初から1人の「羊」は確定している。
実際には3人の中から1人、「生贄」を選びだすことになります。

外界から隔離、監禁された3人。
3日間の猶予期間中に結論がでなければ、
3人もろとも力づくで「人柱」にされるという状況。
3人は誰が生きるべきか死ぬべきかを議論する。
───そして、その結論は・・・

おおよそ世界の終りを救う勇者の物語は数多あれど、
その方法と実践はドラマチックに彩られた物であって然るべきだった。

しかし本書では、その仔細には比重はおかず、
見事に散る「勇者」を選出する経緯にスポットをあてる。

貴方は生き残るに値する人生を送っていますか?
自己に向き合った結果、胸をはって言う事ができるでしょうか?
───もちろん、私が生きのこる と

 

□■ 小説 と ゲーム ■□

本書の構成は非常にユニークです。
ネタばれになるので多くは語りませんが、
非常に小説らしからぬ仕掛けが入っています。

ゲーム会社の企画から生まれた作品である事が色濃くでています。

物語後半にて、その構成が明かされます。
そして最後の結びの1ページ。
話のオチをも構成する一つのギミック。

読者を文字通り引き込む仕掛けは
ゲームライタだからこそ思いつく仕掛けだなと思いました。

このギミックを楽しむ事ができるのも本書の魅力でしょう。

 

□■ 心情描写不足 ■□

残念な点を1つ挙げるとするならば、
世界の終りを描くには圧倒的にページ数が少ないとういことです。

その為か心情描写が足りません。
知ることが愛する事には必ずしも転嫁しません。
シャオリーの心情変化はもっと膨らますべきだったでしょう。

アロイスとアイの依存関係も描写不足。
アイの2面性を全て愛するに至った経緯があっさりしすぎ。
中途半端ならば、ばっさり設定を捨て、
アロイスはアイに首ったけだけで通しても問題なかったのでは?

アキラとサイファの交友もページが足りない。
何故、サイファがアキラに心を開くようになったか。
その段階的詳細化がされていない。

小説化の為、シェイプしすぎたような感を抱きました。


□■ 結び と 救い と 奇跡 と 神 と 人間 と ■□

本書では前身のデジタルノベルには無かった、
新たな可能性を盛り込んだ結末になっています。

冒頭で述べたように、私はデジタルノベルは読んでおらず、
その結末も知りませんが、
おそらく結びのページが「可能性」なのかと勝手に思っています。

全ての物語が大団円で結ばれる必要はないでしょう。
しかし本書においては「救い」があって完結すべきものと思いました。

「羊の方舟」というタイトルを改題し、
「零」による「奇跡」を織り込んだ大団円。

これぞまさに神の御わざです。

大いなる蛇足と評価する人も多いのでしょうが、
「スケープゴート」「神」にいたる物語と捉えれば面白いものかなと。


そして神の御許で、神の愛を知らずに受けて生きる
羊飼い・・・つまり人間の ─── 幸せ。

 

零と羊飼い (一迅社文庫 に 1-1)
零と羊飼い (一迅社文庫 に 1-1) 西川 真音

一迅社 2008-05-20
売り上げランキング : 26715

Amazonで詳しく見る

関連商品
黒水村 (一迅社文庫 く 1-1)
死神のキョウ (一迅社文庫 か 1-1)
死図眼のイタカ (一迅社文庫 す 1-1)
ANGEL+DIVE (1) (一迅社文庫 (し-01-01))
ある夏のお見合いと、あるいは空を泳ぐアネモイと。 (一迅社文庫 し 2-1)

羊の方舟
羊の方舟
工画堂スタジオ 2005-08-26
売り上げランキング : 325

Amazonで詳しく見る

関連商品
シンフォニック=レイン愛蔵版
シンフォニックレイン ボーカルアルバム「RAINBOW」
エンジェルアソートVol.03
しろ画集-Segment-
シンフォニック=レイン 普及版

|

« ユニクロ「UNIQLOCK」 世界三大広告賞で2冠 | トップページ | OADネギま が 終っている件 »

ライトノベル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49030/41420721

この記事へのトラックバック一覧です: 一迅社文庫 西川真音 「零と羊飼い」 感想:

« ユニクロ「UNIQLOCK」 世界三大広告賞で2冠 | トップページ | OADネギま が 終っている件 »